ISMとは?製造業・サービス業の数字でドル円が動く理由をわかりやすく解説

為替・経済の解説

為替のニュースを見ていると、

「ISM製造業が予想を上回りドル高」
「ISMサービス業が弱く、米金利とドル円が下落」

といった表現を見かけることがあります。

CPIや米雇用統計ほど馴染みがなくても、ISMはアメリカの景気が今どちらへ向かっているのかを見るうえで重要な経済指標です。

特に覚えておきたいのが、

ISMは「50を超えたか」だけを見る指標ではない

ということです。

市場では、

50との比較
+前回との比較
+市場予想との差
+指数の中身

まで見られています。

この記事では、

  • ISMとは何か
  • 「50」にはどんな意味があるのか
  • 製造業とサービス業の違い
  • 新規受注・雇用・価格を見る理由
  • なぜISMでドル円が動くのか
  • 発表後にどこを確認すればいいのか

を順番に整理します。

米国の金利についてはこちらの記事でも整理しています。

米国債利回りとは?米2年債・10年債とドル円の関係をわかりやすく解説

FRBの金融政策はこちらです。

FOMCとは?政策金利とドル円が動く仕組みをわかりやすく解説


ISMとは?

ISMは、

Institute for Supply Management

の略です。

日本では一般に、

全米供給管理協会

と呼ばれています。

ISMは企業の購買・供給管理担当者などへの調査をもとに、企業活動が前月と比べて

拡大しているのか、縮小しているのか

を示す指数を毎月公表しています。

為替市場で特に注目されるのが、

ISM製造業PMI
ISMサービス業PMI

です。

サービス業PMIは、以前から日本のニュースで「ISM非製造業景況指数」と呼ばれることもあります。

ざっくり考えるなら、

製造業の状態を見るISM
サービス業の状態を見るISM

の2つがある、と覚えると分かりやすいです。


ISMの「50」は何を意味する?

ISMを見るうえで、まず覚えておきたい数字が

50

です。

基本的には、

50を上回る
→ 前月より活動が拡大

50を下回る
→ 前月より活動が縮小

と読みます。

たとえば、

ISM製造業PMIが52なら、製造業活動は前月より拡大。

48なら、前月より縮小。

という見方です。

ただし、ここで注意したいのが、

「50超え=何でも良い」「50割れ=何でも悪い」ではない

ということです。


50だけではなく「勢い」も見る

たとえば、

前回55 → 今回51

だったとします。

51なので、まだ活動は拡大しています。

ただし、

拡大する勢いは弱くなっています。

反対に、

前回47 → 今回49

なら、まだ50を下回っているので活動は縮小しています。

でも、

縮小するペースは弱まり、改善方向へ向かっています。

つまり、

50との比較だけでなく、前回からどう変化したか

も重要です。


さらに重要なのが市場予想との差

為替を見るなら、もう一つ重要なのが

市場予想との比較

です。

たとえば、

市場予想49
→ 実際51

だった場合。

51なので活動が拡大しているだけでなく、

市場が考えていたよりも強い結果

です。

この「予想とのズレ」が、米金利やドル円を大きく動かすことがあります。

ISMを見るときは、

① 50との比較
② 前回との比較
③ 市場予想との差

の3つをセットで見ると分かりやすいです。


ISM製造業PMIとは?

ISM製造業PMIは、

アメリカの製造業の活動状況を見る指標

です。

製造業には、

  • 機械
  • 化学
  • 電子機器
  • 金属
  • 食品
  • 輸送機器

など、さまざまな業種があります。

製造業は企業の受注や在庫、設備投資などの変化を受けやすいため、

景気がどちらへ向かっているのかを見る材料

として注目されます。


ISMサービス業PMIとは?

もう一つが、

ISMサービス業PMI

です。

サービス業には、

  • 金融
  • 小売
  • 運輸
  • 医療
  • 宿泊・飲食
  • 情報サービス

など、幅広い分野があります。

アメリカではサービス分野の経済規模が大きいため、製造業PMIが弱くてもサービス業PMIが強ければ、

「米景気全体はまだ底堅いかもしれない」

という見方につながることがあります。

そのため、製造業とサービス業のどちらか一方だけではなく、

両方を見る

と米景気の状態を整理しやすくなります。


ISMは総合指数だけ見ればいい?

ISMでは、総合的なPMIだけでなく、複数の項目も公表されます。

ドル円を見るときに特に覚えておきたいのが、

新規受注
雇用
価格

の3つです。


① 新規受注|これからの景気を見る

新規受注は、

企業に新しい注文がどれくらい入っているか

を見る項目です。

注文が増えていれば、

今後生産が増える

企業活動が強くなる

可能性があります。

そのため、新規受注は

景気の先行きを見るヒント

として注目されます。

総合PMIがそれほど強くなくても、新規受注が大きく改善していれば、

「この先、企業活動が改善するかもしれない」

という見方につながることがあります。


② 雇用|労働市場を見るヒント

ISMには、企業の雇用状況を見る指数もあります。

企業が、

人を増やしているのか、減らしているのか

を確認する材料です。

そのため、米雇用統計を控えている場面では、

労働市場の状態を見る参考材料

として注目されることがあります。

ただし、

ISM雇用指数が強い=米雇用統計も必ず強い

わけではありません。

調査対象や方法が違うため、あくまで一つのヒントとして見るのが自然です。

米雇用統計とは?ドル円が大きく動く理由をわかりやすく解説


③ 価格|インフレ圧力を見る

為替市場で特に注目されることがあるのが、

価格指数

です。

企業が仕入れるモノやサービスなどの価格が、上昇しているのか低下しているのかを見る材料になります。

価格指数が強く上昇すると、

「企業側のコスト圧力がまだ強いのでは?」

と市場が考えることがあります。

すると、

インフレが下がりにくいとの見方

FRBの政策金利見通しが引き締め方向へ変化

米金利上昇

ドル買い

につながることがあります。

つまりISMは、

景気を見るだけでなく、インフレを見るヒントにもなる

ということです。


どの項目が一番重要?

これは毎回同じではありません。

市場がそのとき何を一番気にしているかによって変わります。

たとえば、

景気後退への警戒が強いとき
→ 新規受注や雇用が注目されやすい

インフレへの警戒が強いとき
→ 価格指数が注目されやすい

という違いがあります。

そのため、

「ISMならこの項目だけ見ればいい」

ではなく、

そのときの相場テーマに合わせて中身を見る

のがポイントです。


ISMが強いとドル円はどうなりやすい?

基本的な流れは、

ISMが市場予想より強い

米景気が底堅いとの見方

FRBが金融政策を緩めにくいとの見方

米金利上昇

ドル買い

ドル円上昇要因

となりやすいです。

反対に、

ISMが予想より弱い

景気減速への警戒

金融政策が緩みやすいとの見方

米金利低下

ドル売り

ドル円下落要因

として意識されやすくなります。

ここでも重要なのは、

ISMそのものがドル円を動かしているのではなく、ISMによって景気やFRBの政策見通しが変わり、それを受けて米金利やドルが動く

という点です。


ISMが強ければ必ずドル高になる?

もちろん、必ずではありません。

たとえば、

総合PMIは強い
でも価格指数は大幅低下

という結果もあります。

この場合、

「景気は強いけれど、インフレ圧力は弱まっている」

という見方ができます。

反対に、

総合PMIは弱い
でも価格指数はかなり強い

ということもあります。

これは、

景気が弱いのに物価圧力が残っている

という少し難しい状態です。

そのため、総合指数だけで

「強いからドル買い」

と決めるのは少し早いです。


発表後は米金利を見る

ISMの数字を確認したら、

米2年債・10年債利回り

も見たいです。

特に米2年債利回りは、比較的近い将来のFRBの政策金利見通しを反映しやすい金利です。

たとえば、

ISMが予想より強い

米2年債利回りも上昇

ドル円も上昇

なら、

市場がISMを受けてFRBの政策金利見通しをタカ派方向に修正した

と考えやすくなります。

反対に、ISMが弱く米2年債も低下していれば、金融政策が緩む方向への見方が強まった可能性があります。

米国債利回りとは?米2年債・10年債とドル円の関係をわかりやすく解説


ISM発表ではこの順番で見る

ISMが発表されたら、私は次の順番で整理すると分かりやすいと思います。

① 市場予想との差

予想より強かったか、弱かったか。

② 50との比較

活動が拡大しているのか、縮小しているのか。

③ 前回との比較

勢いが改善しているのか、悪化しているのか。

④ 新規受注・雇用・価格

中身に特徴がないか確認します。

⑤ 米金利

市場がFRBの政策見通しをどう修正したかを見ます。

⑥ ドル円

最後に実際の為替がどう反応しているか確認します。

この順番なら、

「ISMが52だったから良い」

だけではなく、

なぜ市場がドルを買ったのか、売ったのか

まで整理しやすくなります。


ISMとCPI・雇用統計はつながっている

ISMは単独の指標ではなく、これまでの記事ともつながっています。

たとえば、

ISM価格指数
→ インフレ圧力を見るヒント
→ CPI・PCEへの見方

ISM雇用指数
→ 労働市場を見るヒント
→ 米雇用統計への見方

ISM新規受注
→ 今後の企業活動・景気を見るヒント

そして、こうしたデータを見ながら市場は、

FRBが次にどう動くのか

を考えます。

大きくまとめると、

ISM
→ 景気・物価・雇用
→ FRBの政策見通し
→ 米金利
→ ドル円

という流れです。


ひかるMEMO

ISMを見るときは、

「50を超えた?下回った?」だけで終わらない

のが大事だと思っています。

私なら、

市場予想との差
→ 50との比較
→ 前回との比較
→ 新規受注・雇用・価格
→ 米金利
→ ドル円

という順番で見ます。

特に面白いのが、

総合指数は弱いのに、価格だけ強い

といったケースです。

こうなると、

「景気は弱いのに、インフレはまだ強いのかな?」

という別の見方が出てきます。

ISMは一つの数字を見るというより、

中身を見ながら今の米国経済を少し分解して考える指標

として見ると、かなり分かりやすいと思います。


まとめ

ISMを見るときに押さえておきたいのは次の4点です。

① 「50」は拡大・縮小の目安

50を上回れば前月より活動拡大、下回れば縮小を示します。

② 50だけではなく前回値と市場予想も見る

55→51と47→49では、同じ「50の上下」だけでは分からない変化があります。

③ 新規受注・雇用・価格を見る

景気の先行き、労働市場、インフレ圧力を考えるヒントになります。

④ 最後は米金利とドル円を見る

ISMによってFRBの政策金利見通しがどう変わったのかを確認することが大切です。

ISMのニュースを見たら、

「50より上?下?」

だけではなく、

「予想との差は?」
「前回より改善した?」
「新規受注・雇用・価格は?」
「米金利はどう動いた?」

まで見る。

これが、ドル円を見るときのISMの基本です。

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※本記事は公開情報をもとに相場を整理した個人的な見立てです。将来の値動きや利益を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。